社会派くん

唐沢俊一村崎百郎 著「社会派くんがゆく 維新編」アスペクト)読み終わりました。
1月に…。
シリーズも、もう5冊目ですね(しみじみ)
大抵オンライン書店bk1で買うんですが、前回逆襲編のときは予約特典でサイン付きであり、なんだか嬉しかったです(今回はうっかり予約しそびれました…)
毎回古屋兎丸の表紙も楽しみです。


HPで連載してるので、結構まめに見てたりします。
大体月一回更新(ときどき号外あり)


時事問題について対談形式で斬りまくります。
今回は郵政民営化や奈良女児殺害、ホリエモン騒動や東京少女監禁など…。
鬼畜対談として好き放題喋ってるようにありながら、時に正論が出てたりしてそのギャップも面白いです。
あと唐沢俊一村崎百郎ともにマニアックな本を読んでいるのがかいま見えて楽しい…。
色々裏情報ぽいのも分かって面白いっす。
黒田○子さんが車の免許を取るときに交通規制があったらしいとかね…。
あとは村崎百郎の顔とどこでそんな衣装が売ってるのかが気になるところです…。

風邪引きの日は

風邪を引いたらやっぱり読書ですよね。

というわけで、先週風邪で1日だけ寝込んでいる間に読んだ本の感想でも書いてみます。

(ほんとは3日ほど風邪引きだったんですが、一番非道いときは仕事に行ってた1日目だったので。3日目にはほぼ治ってたり)


1冊目。


麻耶 雄嵩」(幻冬舎またはGENTOSHA NOVELS 幻冬舎推理叢書
長編本格ミステリです。


2004年8月にハードカバーで買っておきながら、ノベルスが出た先月まで未読で放っておいたのがなんとも勿体なかったなあと(読後に)思いました。


館ものです。オカルトサークルの合宿場となった、10年前殺人の起こった館。
過去の惨劇をなぞるかのように起こる殺人事件。
と来るとなかなか本格の王道のような感じがしますが、全編を通じて、狂ったメロディが鳴り響いているようなある種独特の雰囲気があります。
館自体、もとの持ち主の趣味で黒を基調にした重厚かつアナログなまでの西洋館であり、オカルトサークルのOBが買い取ってわざわざ10年前の事件当時を忠実に再現しているという、酔狂な場なのですが、集まったメンバーもひとくせもふたくせもある人ばかりで、はっきりいって誰が犯人でもおかしくないような感じがします。
とはいえ、データは文中に揃っており、良く読めば確かにわかるなあと思いました(読後に)
館も、過去の事件も、物語中で前年から起こっている連続婦女誘拐殺人事件や、また館の中で起こりつつある事態といい、かなりビジュアル的にもくっきりしたイメージが浮かびやすいのですが、これは映像化するのはいろいろな意味で大変だろうなあと思いました。お金掛かりそうだし…。
おなじく館ものである「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ」に近いカタルシスが味わえると思います。或る意味作者の悪意も感じますが。お勧め。


続いては、田中啓文「笑酔亭梅寿謎解噺」集英社

これも半年くらい寝かせただろうか…。


連作ミステリです。
単なる音楽好きの不良にすぎなかった竜二(高校中退)が、紆余曲折の末、落語家として成長していく話です。
その過程でただの酔っぱらいにしか見えなかった師匠が思いもつかぬ程見事な腕前をみせたり、ピン芸人の女の子が思わぬ意地を見せたり、兄弟子や姉弟子もなかなかイイ奴だったりと、それぞれの人物の造形も見事です。師匠の孫も可愛い。

しかし全編にわたって、落語家としての才能もあるだろうが、探偵になった方が良かったのではないか竜二君…と思わずにはいられないほど見事な推理を見せます。しかも師匠を立てながら。
短編ごとにテーマとなる落語があって物語と上手く融合させています。
あまり落語自体には興味がなかった私までなんか落語も見たくなるくらいであります。
ミステリとしても良作だと思います。螢と違って万人にお勧めできる感じ…。


という感じの2本でした。どちらも面白かったです。

つれづれなるままに…

もうとっくに年は明けてしまいましたが、これが新年初の読書日記とは…。


読み終わった本で、最近面白かったものを順不同にて。


明智抄少女忍法帖」(ぶんか社

文庫版コミックスです。表題作は忍者マンガ、現代社会に生きながらおしんなみの忍従と修行の日々を強いられる少女、楓が主人公。相棒はガマのタマ(巨大)。スパルタな母と、錯綜した人間関係がなんとも面白く、これは6話で終わるはもったいないネタだと思うのだが…やっとライバルも出現したし、続かないのかな。
ほかの短編も既読でしたが面白かったです。少女をとりまく、そして少女のうちに潜む悪意を描かせるとほんとに上手いなあと思います。
なかがき、あとがきのエッセイマンガで明智抄の娘さんの美豚(みとん。凄い当て字だ)と息子さんのくろみつくんが大活躍。というか、昔同じようにエッセイマンガででてきたときもおもったけど、くろみつくん成長してもいい子だなあ(しみじみ)


森奈津子あぶない学園大さわぎ」(レモン文庫)

お正月前後は、ほかにも古本屋でたくさん著者のデビュー直後のヤングアダルト仕入れてほくほくでした。

「お嬢様シリーズ」4冊も安定して笑えて面白く、「ふしぎの丘の妖怪変化」の猫変化たちも可愛らしかったり、「帰ってきた女王様」の続編は無いのかなあと思ったりもしたのですが、なんといっても、あぶない学園のおもしろさにはかなわなかったです。
主人公螢子が高校に入学して約1ヶ月後。見た目はモデルなのに、全く常識しらずの美少年に巡りあうところから始まります。
気は合うのですが、お互いに完全に恋愛対象外というところがなんとも。
彼らを含め、とにかく個性的な子が沢山登場するのです。


螢子にしてからが、惚れた女の子を追って第三志望の学校(ちなみに第一、第二ともに合格してるのに)行くという変わり種のうえ、真意を悟りにくいほどポーカーフェイスで一匹狼な奴という妙な設定で、少女小説でしかも女の子の一人称なのに、妙にハードボイルドな雰囲気が漂っていて素敵です。
彼らの起こす騒動が書かれているのはほんの数日のことなのですが、ほんとにえらい濃い感じの騒動が巻き起こります。
まさに、一般小説に移ってからの森奈津子の活躍ぶりがかいまみられるような快作でした。
こんなにあやとりが熱いとは思わなかったよ…。



…長くなったので続きはまた今度。


あ、都筑道夫は相変わらず読んでいます。「ちみどろ砂絵」、「銀河盗賊ビリイ・アレグロ」「ベッド・ディテクティヴ」「ダウンタウンの通り雨」「朱漆の壁に血がしたたる」「妄想名探偵」「悪意辞典1,2」等々。主人公、ジャンルは違えど、どれを読んでも、ハズレがないのが凄いですよね。まだストックはあるけど、ほんとに読むのが無くなったらどうしようというのが正直怖いです。まだまとまった感想書いてないですね…。

お風呂で本を読むのは好きですか?

私はわりと好きです。


ちょっと濡れるのが心配だったのですが、大島弓子先生がエッセイマンガの中で「本はお風呂で読んでも、それほどふやけないモノだ」とおっしゃっていたので、それからは時々やっています。


ただ、紙でもいいからブックカバーは必要ですね。
あと、お風呂のふたを半分かぶせて転落防止を。


(いや一度うっかり寝てしまってお湯の中に落としたことがあるんですよ。宮沢章夫の小説で、なんの因果か新刊を。「サーチエンジン・システムクラッシュ」(文春文庫)だったな。紙ってほんとに濡れると膨らみますよね…。分厚くなった本をそれでも読み終えましたよ。あれからしばらくはお風呂で本が読めなかった…)


まあそうやって注意していても少しはねることがあるので、なんとかならないかと思っていたところ。
本屋で興味深いものをみつけてしまいました。


風呂で読める文庫100選


早速一冊買ってみました。値段は千円。
岡本綺堂 編「世界怪談名作集」。
やっぱりお風呂で読むのは怪談だよね(あと寝る前も)


買ってみたところ本全体がプラスチック素材で出来ていました。
ちょうどプラスチックのトランプを文庫本サイズにした感じ。
(といっても通常の文庫よりやや横広で縦は短いかな)
右にならんで穴が開いていてルーズリーフのようになっています。
ややめくりにくいのと、普通の本より重めなのが難点かな。
まあそれでも許容範囲ではあります。


ページを開くと最初に警告が載っていて。
くれぐれも読書に熱中するあまり、入浴しすぎないように注意してあります。
良心的ですね。

文字はくっきりして全体的に読みやすいです。

短編が6話収録されていました。
3日で読了したので一日2編くらい読んだんだろうか。
印象的だったのはディッケンズ「信号手」とモーパッサン「幽霊」かな。
怪談はやはり説明しすぎないくらいが良いなあと個人的には思います。
ホーソーンの「ラッパチーニの娘」は主人公の身勝手さにちょっとむかつきました。


お湯を気にせず気楽に読書ができて、なかなか楽しかったです。
次は「日本ミステリー名作集」一〜三でも買おうかなあ。




しかし、この文章ですが。
書き終わりかけたときに、うっかり参考文献として手元に置いてた岡本綺堂 編「世界怪談名作集」をESCキーの上に置いてしまい文章が全て消えてしまったため、書き直したものです。



こんな事で文庫の重みを知りたくなかったなあ…。

都筑道夫のホテルディックシリーズ(読み途中)

都筑道夫を引き続き読んでいます。
最近読んだのが「髑髏島殺人事件」そして「ホテルディックシリーズ 探偵は眠らない」。
なんですが。

読了後、後書きをよみつつよく考えたら「探偵は眠らない」はホテルディックシリーズ初の長編小説、ということは他に先行する作品があるのでは…。

ありました。
「毎日が13日の金曜日」と「殺人現場へ二十八歩」。
ともに連作短編集でした。

とりあえず2冊とも持っていますので、読了語感想を書きたいと思います…。

都筑道夫愛読会その1

最近都筑道夫にはまり始めたので、小説を集めています。いやまだ初心者ですが。
文庫全集も出始めたのでそちらも買っていますが、なにしろ短編を600編以上、長編もいろいろと書かれた方なので、なかなか追いつかず、もっぱら古本屋で買っていたりします。
(日本で一番短編を書いたのは、星新一阿刀田高都筑道夫のどなたかという気がするのですが。どうなんでしょう。…星新一かな?)
ほんと作風が広くて(ミステリSFパスティーユ翻訳パズル怪談歴史艶笑ものまで)、本も沢山出ているので集めがいがあります。
昨日はちょうど2冊ほど読んだのでその感想を。

まず都筑道夫コレクション《怪談編》血のスープ」光文社文庫)から。
これは都筑道夫の数多い作品から怪談に関わるような話を長編・短編・エッセイと選りすぐって集成したものですが。表題作でもある長編「血のスープ」は初めて読みましたが、とても面白かったです。文庫には初収録だそうです。
ひとことでいえば吸血鬼ものなんでしょうか。はじめは舞台はハワイ。そして日本へと移り変わります。そのなかで、ほんとうに吸血鬼なのかもわからない怪しげな人物が出てきます。その存在感と人間離れした感じがなんともいえないです。そうしてちょっとした出来心で吸血鬼?に大きく関わることとなる初老の男性である主人公の煩悶がなんともいえずリアルです。あくまで今までの日常を続けながらも、吸血鬼に常に繋がれている。その繋がり方もある意味現代的だなあとも思います。そして通信手段も(この通信の際の表記方法がなかなか大胆でよかったです。まあ実物をみてもらうのが良いかと)。ヒロインも主人公に御されるのではなく、はっきりとした意志をもつ女性として描かれていてイイ感じです。そして吸血?シーンもなかなか妖しげで良かったです。ラストもいろいろ想像させる終わり方だなあと思います。

そのほかの短編も本当に上手いです。どの作品も端正であり、ついつい話術に乗せられているうちにラストで思わぬ驚きを与えられてしまうという感じです。
好きなのは義理の父を疑う少年の話「ハルピュィア」やふと訪れた雑貨店で見つけたドールハウスを巡る「人形の家」、ある殺人がなぜかゾンビを生み出す起因となるコミカルな「骸骨」など。「風見鶏」と「夜の声」はひとつのアイディアで短編とショートショートに書き分けたもの。構成の違いが面白かったです。初めて読んだ雪崩連太郎ものも面白かったなあ。なぜか怪異に縁のあるルポライターが旅先で遭う事件。今度は全集も読んでみたいです。エッセイも作者の舞台裏がかいま見えたり、他の作品が読みたくなったりして興味深かったです。

次に「25階の窓」新潮文庫)。怪談を集めた短編集。表題は25作の作品が収録されているところから来ているそうです。
収録数が多いため、とくに気に入った話だけ紹介させてもらいます。
冒頭にある「阿蘭陀すてれん」。どうしても読めない小説を友人に貸してもらったことから始まる怪異。題の意味は文中にあるとおり、ある遊具をさすことばなのです。友人のなにげないことばがラストで異様に胸に迫ってきます。
「かくれんぼ」も怖い話です。はじめは恋人達のなにげない戯れだったはずが、次第次第に狂っていき、とても美しいラストシーンへとつながっていきます。
「古いトランク」は古いトランクを巡り、引き起こされる話。とても異様なのにまるでいまにも起こりうることのような奇妙な錯覚を覚えます。
「神になった男」は現代版カフカともいえる話。途中までコミカルなのにラストはなんとも哀愁が漂います。
「片腕」はなくした片腕を探す話。どちらが彼岸でどちらが此岸なのか。どちらがいい人でどちらが悪い人なのか。とても曖昧になる話です。
「髑髏盃」はふとしたことで見つけた盃を巡り怪奇が起こる話。皆が豹変していく様が見物です。
「春で朧でご縁日」は泉鏡花の小説の一節から取った題です。ふと主人公が出かけた縁日がまるで泉鏡花の話のようにうつつは思いがけない風景へとつながり、思いもかけないものを見つけます。
最終話「古い映画館」は閉館した元映画館が舞台です。友人と入り込んだ主人公は、暗い舞台の上の白い光に恐ろしいものを見せつけられます。
というわけで、駆け足で紹介してみました。どの作品もそれぞれおもしろかったですよ。

倉橋由美子先生…

倉橋由美子「あたりまえのこと」(朝日文庫)を読みました。
エッセイや評論をまとめたものです。

なんというかいろいろ打ちのめされますね。
このひとのあたりまえ、にどれだけの人が付いてこれるのかと。
主な題材は小説について。
源氏物語から三島由紀夫村上春樹から山田詠美カフカまで、題材は幅広く、あくまでこの人の明快な基準に従ってばっさばっさと調理されていきます。

「恋は愚行の一種であり…恋における愚行の最大のものが情死である」
「小説は商品であり…正面切ってケチを付けることは営業妨害とも取られかねない。…つまり批評など出てくるはずがないので同業者の挨拶だけがさかんに飛び交う」
山田詠美の「ベッドタイムアイズ」を読むことはジャズを聴くことに似ている」
等々。

すべての意見に納得できるわけではないですが、この人でなければこうはいえないであろう鋭い批評眼によって書かれた文章です。
短い文章が多いですが、決して軽くは読めず、またいろいろ考えさせられること必須でしょう。