倉橋由美子先生…

倉橋由美子「あたりまえのこと」(朝日文庫)を読みました。
エッセイや評論をまとめたものです。

なんというかいろいろ打ちのめされますね。
このひとのあたりまえ、にどれだけの人が付いてこれるのかと。
主な題材は小説について。
源氏物語から三島由紀夫村上春樹から山田詠美カフカまで、題材は幅広く、あくまでこの人の明快な基準に従ってばっさばっさと調理されていきます。

「恋は愚行の一種であり…恋における愚行の最大のものが情死である」
「小説は商品であり…正面切ってケチを付けることは営業妨害とも取られかねない。…つまり批評など出てくるはずがないので同業者の挨拶だけがさかんに飛び交う」
山田詠美の「ベッドタイムアイズ」を読むことはジャズを聴くことに似ている」
等々。

すべての意見に納得できるわけではないですが、この人でなければこうはいえないであろう鋭い批評眼によって書かれた文章です。
短い文章が多いですが、決して軽くは読めず、またいろいろ考えさせられること必須でしょう。