風邪引きの日は

風邪を引いたらやっぱり読書ですよね。

というわけで、先週風邪で1日だけ寝込んでいる間に読んだ本の感想でも書いてみます。

(ほんとは3日ほど風邪引きだったんですが、一番非道いときは仕事に行ってた1日目だったので。3日目にはほぼ治ってたり)


1冊目。


麻耶 雄嵩」(幻冬舎またはGENTOSHA NOVELS 幻冬舎推理叢書
長編本格ミステリです。


2004年8月にハードカバーで買っておきながら、ノベルスが出た先月まで未読で放っておいたのがなんとも勿体なかったなあと(読後に)思いました。


館ものです。オカルトサークルの合宿場となった、10年前殺人の起こった館。
過去の惨劇をなぞるかのように起こる殺人事件。
と来るとなかなか本格の王道のような感じがしますが、全編を通じて、狂ったメロディが鳴り響いているようなある種独特の雰囲気があります。
館自体、もとの持ち主の趣味で黒を基調にした重厚かつアナログなまでの西洋館であり、オカルトサークルのOBが買い取ってわざわざ10年前の事件当時を忠実に再現しているという、酔狂な場なのですが、集まったメンバーもひとくせもふたくせもある人ばかりで、はっきりいって誰が犯人でもおかしくないような感じがします。
とはいえ、データは文中に揃っており、良く読めば確かにわかるなあと思いました(読後に)
館も、過去の事件も、物語中で前年から起こっている連続婦女誘拐殺人事件や、また館の中で起こりつつある事態といい、かなりビジュアル的にもくっきりしたイメージが浮かびやすいのですが、これは映像化するのはいろいろな意味で大変だろうなあと思いました。お金掛かりそうだし…。
おなじく館ものである「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ」に近いカタルシスが味わえると思います。或る意味作者の悪意も感じますが。お勧め。


続いては、田中啓文「笑酔亭梅寿謎解噺」集英社

これも半年くらい寝かせただろうか…。


連作ミステリです。
単なる音楽好きの不良にすぎなかった竜二(高校中退)が、紆余曲折の末、落語家として成長していく話です。
その過程でただの酔っぱらいにしか見えなかった師匠が思いもつかぬ程見事な腕前をみせたり、ピン芸人の女の子が思わぬ意地を見せたり、兄弟子や姉弟子もなかなかイイ奴だったりと、それぞれの人物の造形も見事です。師匠の孫も可愛い。

しかし全編にわたって、落語家としての才能もあるだろうが、探偵になった方が良かったのではないか竜二君…と思わずにはいられないほど見事な推理を見せます。しかも師匠を立てながら。
短編ごとにテーマとなる落語があって物語と上手く融合させています。
あまり落語自体には興味がなかった私までなんか落語も見たくなるくらいであります。
ミステリとしても良作だと思います。螢と違って万人にお勧めできる感じ…。


という感じの2本でした。どちらも面白かったです。