2005年4月の読書日記(総集編)

こちらの日記の更新がまた間が開いてしまいました。
忘れないうちに4月分14冊をまとめて書くことにします。
(あともう一冊読んだ気がするんですが、思い出せないんですよね…。思い出せたらこっそり追加しときます)


4月2日
伊丹十三「ヨーロッパ退屈日記」(新潮文庫
エッセイ集。
伊丹十三が表紙、挿絵とも描いていて美麗です。
絵の上手さにびっくりしましたが、もともとデザイナーもされていたそうです。
表題は山口瞳命名山口瞳が書いた推薦文も収録されています)。
文章、生活スタイルとも独自の美意識を貫かれていて、格好良かったです。
この本を読むと、つい色々真似してしまうんじゃないかなあ。
そう、スパゲッテイの上手な食べ方とか。
(私もやってしまいました。皿にスペースを作っておいて、フォークを皿から離さずにくるくると。まだ練習中…。あと絶対音を立てちゃダメだそうです)
ほんとに多才でダンディな方だったんだなあと思いました。


4月3日
中村うさぎ倉田真由美「うさたまのホストクラブなび」(角川文庫)

まあ、なんというか企画モノですね。
中村うさぎ倉田真由美、そして編集者の深澤真紀のコンビで、東京を中心に日本全国のホストクラブを練り歩くという。
この企画でこの三人のコンビができたというだけでも凄いことかもしれないなあと思います。(三人連名の公式HPうさたまCOMはこちら。ttp://www.usatama.com/)
三人とも男性の格好良さの基準がちがうあたりと、ホストクラブでフリの客ではなく、取材ということがばれそうになって慌てているあたりが面白かったです。
あと、日本全国行った先々での料理がとても美味しそうでした。
グルメブックとして読んでも可(用途違いすぎ…)


4月4日
今野緒雪マリア様がみてる 妹オーディション」(コバルト文庫

シリーズ物第19作目(前後編を分けると21作目)。
学園コメディ。女子校モノ。
なかなか(学園内の)妹が決まらない祐巳由乃ですが、いっそオーディションを開くか!という由乃のやけっぱちなことばで幕が開きます。
もともと妹候補が二人いる祐巳と、候補もいないうえ、某先輩に急かされて焦っている由乃
が対照的で面白かったです。
祐巳もどうやらこの回で妹が一人に絞れて来た模様。
由乃は妹が出来たような出来ないような。
あと二人以外にもいろいろ妹らしき人が出来た人も増え、次あたりで二人とも正念場かなあ。
なかなかテンポが良くて面白かったです。


4月11日
モー・ヘイダー著 小林宏明 訳「死を啼く鳥」(ハルキ文庫)

サイコサスペンスもの。長編。
幼い頃に兄が行方不明になったことがトラウマになっている刑事が主人公。
奇妙な特徴のある連続猟奇殺人を追いながらも、手がかりも少ない兄の影を追わずに居られない。
恋人が居るが心は離れかけており、聞き込みの最中に知り合った女性へ次第に心惹かれていく。
話は兄の話と事件を絡めながら二転三転し、恐るべき真相へと突き進んでいく。
多少猟奇的な描写はありますが、完成度は高いです。
なぜ、死体に特殊な加工をしたのか、知ったときはちょっとぞくりとしました。
羊たちの沈黙」とか映画「セブン」とか好きならオススメです。


4月17日
西澤保彦「両性具有迷宮」(双葉文庫

ううむ。セクシャルSFミステリコメディとでも言えばいいのかなあ…。
ええと、主人公が森奈津子という実在の小説家さんをモデルにしているだけに、実在の人物も結構出てきます。倉阪鬼一郎さんや思いがけず図子慧さんが出てきたのがちょっと嬉しかったり(ファンなので)。
話は、とあることから森奈津子さん含む女性多数が不完全な両性具有になってしまったところから始まります。
設定がぶっとんでいますが、単にSFなだけで。
そんな設定よりも森奈津子さんの動じなさっぷりが見事です。
いちおうミステリなだけあって殺人も起こるのですが、そして意外な犯人というのもいるんですが。
それよりも、森奈津子さんを巡る女性同士の恋愛遊戯のほうが印象的だったりします。
怪作だなあ。でも面白かったですがね。


白洲正子「おとこ友達との会話」(新潮文庫

対談集。
表題につられて買いました。
やはり若造には、おとこ友達とはなかなか書けないですよね。
それだけでなんだか貫禄を感じます。
白洲正子さんがお年を召してからの対談のようですが、どんな一流の相手にも動じず、対等に話をされるところが格好良かったです。
やはり確固とした美意識を持たれている方は素敵ですね。
対談相手は赤瀬川原平ライアル・ワトソン、養老猛司など、計9名です。
個人的には前登志夫さんとの2回目の対談で話されていたお稚児遊びのパワー辺りが白洲正子さんの独壇場という感じで面白かったです。


4月21日
津原泰水「綺譚集」(集英社

短編集。全15編。
なかなか濃い話が多くてバラエティに富んでいますが、どれも面白いです。
恋愛譚あり、ホラーあり、小説家村山槐多や牧野修をテーマにしたものあり。
とくに庭に魅入られた男たちの話「ドービニィの庭で」と遠い初恋の話「約束」が印象的でした。
文章も端正で読みやすいです。



4月22日
森奈津子「地下室の幽霊」(エンタティーン倶楽部)

ティーンズ向けミステリ。
主人公は小学生の活発な女の子で、クラス替えで知り合ったクールな女の子とともに幽霊の謎を解いていきます。
二人の女の子が対照的ながら、どちらも他人を思いやるいい子だったり。
幽霊の謎を追っているうちにそこに住んでいる年配の女性と仲良くなったり。
主人公の女の子の心の揺れを丁寧に書いてあって好印象でした。
なんというか可愛い話でした。


4月23日
柾 悟郎「ヴィーナス・シティ」(ハヤカワ文庫JA

近未来SFです。サイバーパンク
今よりももっとリアルなネットワーク世界で、現実では女性でありながら、男性として生きる主人公が、ネット上で思いがけなく知り合った女性ジュンコと恋に落ち、ジュンコの陥った困難から助けようと、試行錯誤する話です。
SFなんですが、結構ミステリ的な仕掛けがあって面白かったです。
ネット世界と近未来の現実世界との描写がなかなかリアルで、ネットとリアル世界が交錯し、しだいに物語は加速しつつ、謎の解明へと向かっていきます。


4月24日
津原泰水「赤い竪琴」(集英社

恋愛小説。
30代の女性が、とある手紙を介して楽器を作る男性と知り合い、次第に彼に惹かれていくが…。
押さえた描写ながら、次第に主人公の恋愛感情が高まっていくさまと、それでも積極的に進んでいけない事情を絡めながら、あくまで押さえた筆致で二人の恋を追っていくところが良かったです。
挿入される文語調の手記も効果的だったと思います。
しかし主人公も落ち着いていそうで、結構うっかりものですね。
そして一日7食って…。
(詳細は本を読んでくださいね)。


田辺聖子「人生はだましだまし」(角川文庫)
エッセイ集。
適度に肩の力を抜いた話で面白かったです。
まあ人間やれる範囲でやればいいんだね。
気負っても仕方ないと優しいことばで書いてあります。
苦労してされてきたからこそ、言えることなんでしょうね。


4月27日
安野モヨコ美人画報」(講談社文庫)

エッセイ集。
著者による絵付きの解説あり。
旅行したり、髪を切ったり、ダイエットに励んでみたり。
美を求める旅は厳しいんだなあと思いました。
著者の自分つっこみぶりも面白かったです。


モー・ヘイダー「悪鬼の檻」(ハルキ文庫)

長編ミステリ。「死を啼く鳥」の続編。
未だに兄の死にとらわれた主人公は、よりストレートに、より過去の兄の事件に関わりのある少年連続レイプ殺害の謎を追っていくことになります。
行方不明となっていた兄の謎がいちおう解けるんですが。
どうも兄の扱いに不満あり。
あれでは少しひどすぎるとおもうが…。


ストリーテリングはあいかわらず巧みですが、細部の取り扱いにどうも疑問点が残る気がする。
主人公と恋人との関係もやや釈然としないし…。


4月29日
宮藤官九郎河原雅彦「河原官九郎」(角川文庫)

企画モノ。
とにかく二人でなんかやってみようかという。
演劇ぶっくという演劇の雑誌に載った割に、まったく演劇とは関係ないことを喜々としてやり続ける二人。
デートしたり、バイトしたり他人の舞台に飛び込んでみたり。
まだ、二人とも売れ始めた頃だったからこんな無茶が出来たんだろうなあと、ちょっとしみじみ。
全然世の中の役には立たなさそうですが、なんだか面白かったです。


まあ、こんなところです。


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